2010年12月11日

玄牝(げんぴん)

河瀬直美監督の玄牝(げんぴん)を観てきました。

映画「うまれる」を観に行った際に上映前の作品紹介で観て、「うまれる」と同様に出産を取り扱った作品でありながら全く切り口の違う印象を受け、是非観たい、と思いました。

「うまれる」が、全体的にハッピーエンドな仕上がりで大人も子供も多くの人が共感できる点があるとすれば、「玄牝」は綺麗事だけではないお産を通しての「生」と「死」へのリアリティであったり、「吉村医院」で働く助産師さんたちの葛藤、吉村先生と家族間の葛藤も扱っています。そこには答えはありません。


吉村医院では、妊婦さんが毎日300回のスクワットがてらの壁拭きをしたり、薪割をしたり自炊をしてお産に向けて自然な体づくりを行います。お産はほの暗いろうそくのような明かりのみ灯した畳部屋で、どれだけ陣痛に時間がかかっても、どれだけ予定日を過ぎても、逆子であっても自然分娩であり促進剤や帝王切開は行いません。(NST-胎児モニターやエコーなど現代医学で良いとされるものは使いながら)


先生は「昔から400人-500人に一人の一定の割合でお産で赤ちゃんは死んでたんです。それを現在の医学で生きられなかった命を無理に活かすことがいいとは思わない」とおっしゃいます。

くららは現代医学で救われた命のひとつです。

心臓血管外科の医療技術が発展してきたからこそ、生後3日目で手術を受けて命を救っていただけたのですが、今から数十年前であれば生後数日で命を落としていました。

そういった背景からも、先生や吉村医院の考え方に100%共感・同意できるわけではないですが、かつてはお産当日まで畑仕事をしてシンプルな食・住生活を行ってきた日本の女性の歴史を思い出させ、「お産が気持ちいいものであること」「本来、医療の手を借りなくても自然なお産は出来るんだ」、そしてまた「お産」「生」同様に「死」も自然なものであるべき、という先生の考え方を訴える映像から、新たな気づきを得ることができました。



下記に映画のサイトからの引用を載せます。

◆玄牝とは
『谷神不死。是謂玄牝』――谷神(こくしん)は死せず。これを玄牝という。
タイトルの「玄牝」とは、老子の『道徳経』第6章にあることば。大河の源流にある谷神は、とめどなく生命を生み出しながらも絶えることはない。谷神同様、女性(器)もまた、万物を生み出す源であり、その働きは尽きることがない。
老子はこれを玄牝――“神秘なる母性”と呼んでいる。

◆吉村医院とは
吉村医院では院長の考えのもと、薬や医療機器などの人工的な介入をせず、女性が本来持っている“産む力”を信じて産む「自然なお産」(自然分娩)を行っている。院内に建つ江戸時代中期の古民家=古屋は、薪割りや板戸ふきなど昔ながらの労働や、一汁一菜の素朴な昼食をとる場として妊婦たちに開放し、出産に向けて心とからだづくりの大切さを伝えている。

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